夜のアーランダ空港

 

午後6時半。アーランダ空港、第5ターミナルにバスは到着した。私はこれから、ホテルに向かわなければならない。

 

ジャンボホステルという名前通り、ジャンボジェット機の形をしたホテルは、空港のすぐそばにあると聞いていた。
しかし、空港に着いたものの、どこにそのホテルがあるのか、ヒントらしきものは一向に見当たらない。

 

日本にいる時の癖で、スマホで地図を開いてしまう。しかしネットはここでは繋がらないということに気づく。いや、正確には繋がるが、Wi-Fiがないとお金が莫大にかかる。

それでも地図上には辛うじて、現在地と目的地を示す点は表示されている。

わけもわからないまま、とりあえずその目的地の点のある方向に向かってみることにする。

 

とりあえず大きな道に出て、ひたすら前に歩くが、だんだんとあることが気にかかるようになる。

道に、歩行者が1人もいないのだ。

すぐそばを車ばかりがビュンビュンと通り過ぎていく。

 

突然、前から走ってきた車がスピードを緩め、窓を開けた。

運転手は、手を左右に振っている。

「NO!」

 あっちへ行け、と言われてしまったようだ。

薄々感じていたことであったが、今歩いている道はどうやら高速道路であるらしかった。

 

しかしこの道を歩かなければ、地図上に示されている目的地の場所にはたどり着けない。
途方に暮れて立ち尽くしていると、もう一度クラクションを鳴らされてしまう。

 

 仕方なく元の道を引き返し、

再び戻ってきたアーランダ空港。

夜の空港は、外から見ると異様なオーラを放っており、着いたときに見たものとは全く別の建物のように感じる。

私はもう一生、この空港から離れられないのではないか。このままホテルにはたどり着けず、一晩ここで寝て、明日の朝の便を待つしかないのかもしれない。

 

家で、ホテルへの行き方くらい調べてくるべきだった。ネットが無いとここまで身動きがとれなくなるとは思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィスビーの夕陽

スウェーデン本土から海を渡って三時間。 フェリーのデッキから水平線を眺めていると、絵本のような街が現れる。 その街の名は、ヴィスビー。 ゴットランド島という小さな島の中にある小さな街。 街の中には城壁で囲まれた旧市街があり、世界遺産にもなっている。 8月の終わり頃。日本人は私の他に1人も見かけない。街を歩きながら、静かに澄んだ空気を体に吸い込む。 目指すのは聖ニコラス聖堂。 聖堂の横の階段を上ると、丘から海を見渡せるのだ。 日も落ち始めた午後4時。 息を切らし、丘にたどり着く。 後ろを振り向くと、私は短く叫んだ。 これまでの人生の中で一番美しい景色を、今目にしているのだという実感で足がすくむ。 オレンジ色の屋根が並んでいる。 射し込む強かな光。包み込む柔らかな光。 青い空は、下になるほどピンク色になる。 そしてそのさらに下に、静かに海がいた。 ピンクの空を横切る飛行機雲が、そのまま真っ直ぐ海へ入って行くかもしれない。そんな妄想も自由に働ける、ここにいる間は。 許される限り、この眺めに目を奪われていたい。 生まれて初めての景色を時に奪われるのが悔しい。 やがて光が弱くなり、オレンジ色の屋根が暗くなっても、私は駄々をこねる子供のように、水平線の彼方を見つめ続けた。 f:id:goodoso:20170421003701j:plain